ななの日常茶飯事

読書好きの日記&読書記録

母性【本の感想】

 

 

本の紹介

著者 湊かなえ

新潮社

刊行 2012年10月

 

本の感想

み終わって初めに感じたことは「ん?最後の最後で難しいぞ?」だった。この本は1章を3つの視点から書いている。母娘の視点はわかるけれど、もう一人が誰なのか最後まで分からなかった。分からないというより、最後に正体が明かされたというべきかもしれない。私の想像していた人物とは全く違う人で一瞬思考停止してしまった。

 

物語の中での大きなポイントは「母性」というよりも「見返りを求める愛」だと私は感じた。終始出てくるセリフがある。

私は愛能う限り、娘を大切に育ててきました。

引用 母性(新潮文庫)

第1章 10頁

愛を与えたから何なのだ。と私は思ってしまった。読者の多くはそう思うかもしれない。もちろん私に娘はいないので、娘からの視点で感想を書いていく。私の母親も同じようなことをよく言う。〇〇してやったんだからとかそんなとこだ。大体未成年の子供に対して「愛」を語ってもほとんど伝わらないし、好奇心の方が大きい年代に、娘に何かしてもらうなんて考えに至るのはおかしいんじゃないかと思う。それよりももっと触れ合う時間が欲しいと思うのが普通だと思う。「愛情」じゃなく「愛」なのがポイントだと思った。

 

語中盤から段々と不穏な空気が漂い始める。元々あったものがあるきっかけで爆発してしまう。母が好きな娘。そのまた娘。中盤を読んでいくと、ある事が頭に浮かんできた。ここに出てくる女性達は母親になりきれて無いのではないか。それは語り手の母親だけではなく義母や義姉など、話に出てくる子を持つ母親達はそれぞれ間違った母性を持っているのではないかと思えて来た。

そしてそれは父親達にも当てはまる。この物語の父親達は全く親では無いなと感じた。誰が読んでもダメな人だと思わせる書き方はすごいと思う

 

自分の思い通りの子供に育たないと「悪い子供」の烙印を押す。こんなにも娘の為にしてあげてるのに、娘は全く返してくれないじゃないか、という思いが文章の至る所から伝わってくる。

 

の視点はどうだろうか。私には大人になるのが早すぎた子供に見えた。ならざるをえなかったのだと思う。母親の喜ぶように行動するというのが小さい頃から染み付いてしまって、自分が間違っているのにも気づかない。母親のためにという思いが強すぎて、自分を守るという行動がほとんど感じられなかった。子供が全て正しいとは思わないが、子供ほど純粋な心を持っている人間はいないと思う。しかし、知らずうちにその純粋な心をへし折られてしまったんだろうなと思った。

 

画にもなっている母性だが、映画はまだ見ていない。ネトフリに来るらしいので来たらすぐ見たいと思う。それくらいインパクトはあった。この作品は湊かなえ先生が書くからこそ読めるものになったんだと私は思う。ここまで異常な愛を子供に注いで、見返りを求める母親というのは気持ち悪くて見てられない。それをかろうじて読めるギリギリの表現で書くというのは、人物の設定や表現力が凄まじいなと思った。人にお勧めできる本かと言われたら、私は勧めないかな。人によって全く感想が違くなる本だと思うので他の人の感想も見てみる事にする。やはり、形にならない「愛」というのは見返りを求めるものでは無いと再認識できる作品だった。

 

2023.5.24 読了