本の紹介
著者 町田そのこ
発行 2020年
本の感想
この本は2021年本屋大賞を受賞しているので、読書好きな皆さんなら読んだ人が多いのではないだろうか。物語の内容は虐待や自殺を描いているので読み進めるのが苦しくなった人もいるだろう。同時に主人公たちの成長も描かれているので、そこで勇気をもらった人も多いと思う。本書は2024年には映画化される予定なので、それ前に読んでみようと思い手に取った。
物語の序盤で出会った少年52が虐待を受けていると知ったキナコ。そこからどうにかして52を救えないかと奮闘していく。序盤中盤はキナコの過去についての語りが続く。虐待はあってはいけない事だと思うし、自分もそれに気づいたら何かできる事はないかと考えるだろう。しかしキナコがそうであったように、虐待に慣れすぎて感覚が麻痺してしまっている人も多いと思う。DVでは暴行をした後に優しく接して縛り付けるような事例があるのは知っているが、実際に私がそういった人に出会ったらどうなるだろうか。被害者を何とか説得すれば助けられるだろうか。それとも52ヘルツの声を聞けずにその場を去ってしまうのか。キナコが52を救い出すことができたのは、アンさんや過去の失敗があったからだと思う。それがなかったら52の声はキナコに届かなかったかもしれない。
私は町田そのこ先生が書く優しさが好きだ。無責任な優しさではなく責任感のある優しさ、尖ったものを少しずつ丸くしようとする書き方。最初にどれだけ苦しくても、少しの希望から一気に広がっていく展開がとても好き。本書も最終的にはキナコと52だけではなく、その他大勢の優しさに包まれていたので本当に良かった。
虐待やDVは絶対にあってはならないことだ。それは私が死ぬまで絶対に変わらない事実。もし自分の周りで苦しんでいる人がいるのなら、絶対に手を差し伸べたいと思える作品だった。そんな時が来たら言葉だけの無責任な優しさではなく、行動に移せるようにしようと思った。
最後に、本屋大賞の受賞と映画化おめでとうございます。映画公開を楽しみに待とうと思います。