ななの日常茶飯事

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滅びの前のシャングリラ【本の感想】

 

 

本の紹介

著者 凪良ゆう

中央公論新社

発行 2020年

 

本の感想

と一ヶ月で地球に小惑星が衝突し、地球は滅びる。そう言われたら何をするだろうか。本書は一ヶ月後に迫った地球滅亡へのカウントダウンをどう生きるか、4人の視点から書いたものである。

いじめを受けている学生。その母親。暴力しか取り柄のない半グレの男。大人気歌姫Loco。それぞれが、自分に迫る避けようのない死をどう迎えるか、あと一ヶ月で日本はどう変わっていってしまうのか。

 

じめられている人を前にしたら、藤森さんの様に振る舞うのが自分を守るためにもなると私は思う。学生なら尚更そうだと思う。自分に飛び火しないためにそうする人が多いと思うが、心の中では皆んな立ち向かって助けてあげたいはずだ。もしくは無関心を装うか。下心があったとはいえ、江那くんは藤森さんのために迷わず立ち向かった所が男らしくて好感をもてた。

 

森さんと江那くんの関係がとても愛らしく思えてくる。江那くんがしっかり親の血を継いでいて、藤森さんを守るところはかっこよかったし、自分の気持ちに素直になった藤森さんも、狭い世界から解放されたようで幸せそうだった。それはLocoも同じかもしれない。

静香と信士も自分達らしい最後を迎えることができてよかった。静香が持つ親にしか分からない息子への愛。信士も彼らしく皆んなに向き合っていて、最後の生活では彼の強さと不器用さが誇らしい武器に見えた。

避けられない死が近づいているのに、読み進めていくたびに自由になっていく主人公達が幸せそうに見える不思議な物語。

地球最後の一ヶ月、私はどうやって過ごしているんだろう。バンドが好きな私はLocoのライブに行くかもしれない。