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ぎょらん【本の感想】

 

 

本の紹介

著者 町田そのこ

新潮文庫

発行 令和5年

 

本の感想

人が死ぬ際に残す珠「ぎょらん」。口にすれば死者の最後の願いが分かると言われている。親友のぎょらんを口にし、引きこもりになってしまった朱鷺は、ぎょらんの真相を探るべく調べ続ける。そんな朱鷺とぎょらんをきっかけに出会う人々の物語。

 

人が死ぬ前に残す、想いや願いから生まれるとされている珠「ぎょらん」。最初は、そんなものがあるなら私も口にしてみたいと思いながら読み進めていたが、どうやらぎょらんにはいい想いや願いだけではなく、悪い感情や恨みが詰まっている場合もあると分かり恐ろしくなった。朱鷺は後者のぎょらんを口にしてしまい長い間引きこもることになる。7編からなる物語を通して朱鷺の成長や命の重さ、ぎょらんにまつわる謎が浮き彫りになっていくのが読んでいてクセになった。朱鷺が葬儀社で働き始めて少しずつ社会に溶け込もうと頑張る姿を見ていると、私も背中を押されている気分になった。

 

葬儀社で働き始めた朱鷺が、グループホームエンディングノートを配る話があった。私も実際に実物を見た事は無いが存在は知っていた。終活に向けて葬儀や身の回りの事を書き留めておくノート。数年前に話題になったので知ってる人も多いだろう。エンディングノートを書く際は、いつか訪れる自分の死と向き合う必要がある。私はまだ20代だけど、若いから死なないなんてことはない。現実的な話をしてしまうと「ぎょらん」はこの世には無いと思った方がいいだろう。しかし、エンディングノートを書くことによって自分の死後の願いや想いを残すことができる。(遺書よりも願いの部分が大きいと思う)そう考えると残された人達のためにも、エンディングノートはとても重要なものになるだろう。

 

物語終盤で明らかになる「ぎょらん」の正体。その時朱鷺や登場人物たちはどうするのか。ぎょらんが実はそういう物だったと分かった時は、妙に納得してしまった自分がいた。避けることのできない死を真正面から描いた一冊。想いは言葉にしないと伝わらないし、亡くなってからじゃ確認しようがない。死に対しての考え方が変わる物語だった。