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アカガミ【本の感想】

 

 

本の紹介

著者 窪美澄

河出書房新社

刊行 2018年

 

本の感想

者が恋愛や性行為をしなくなった日本を描いた作品。若者の自殺者が急増し、街を歩いても若い妊婦を見る事はほとんどない。主人公ミツキも自殺をしようとしていた。そこでログという女性に助けられたところから物語ははじまる。ログに誘われて国が立ち上げた制度「アカガミ」にミツキが参加することになる。

 

カガミと聞くと戦争の召集令状である「赤紙」を思い浮かべる人がほとんどだろう。本書のアカガミは簡単に説明すると、恋愛をしなくなった性行為が無くなった若者に対して国がカップリング制度を設けたもの。しかしその制度には審査や綿密な身体検査があり、国に認められなければ参加できない。そもそもその関係者などからの紹介などでしか参加は許されないようだ。実際そのようなものが現実にあったらどうだろうか。今ではマッチングアプリなどが流行だが、それを国がやるくらいには若者の中から恋愛が消え失せてしまっているということだ。

 

書を読み始めると、ミツキは恋愛や性行為自体学校で教わったくらいしか知らないし、恋をする感情が抜け落ちていることが感じ取れる。しかしアカガミに参加して、相手のサツキに出会うことで全てが開花していく。この場合変化より開花の方があっているだろう。国に優遇され住む家も体調も食事も全て管理される。私はそんなの絶対無理だし、いくら貰っても首を縦に振る事はないだろう。アカガミで選ばれて人たちは塀の中で管理され暮らしていく。番いとなってまぐわい(性行為)をして子供を産む。ミツキはこの一連の流れに不信感を覚えない。察しがいい人はこの時点でおかしいと気づくかもしれない。

 

書は恋愛感情が抜け落ちたミツキが初めて恋をして、母になるまでの話。しかしそこに至るまでの流れは一般の私たちとは似てるようだがどこか違う。それは全て管理され想定内の恋愛だからだろう。最終的にミツキとサツキがどうなるかは最後の最後でしか分からない。現実の戦争で赤紙を出し国が人(兵士)を欲しがったように、少子化や若者の自殺でアカガミによって人(子を産む人)を欲しがる本書の日本という国。両者は死と生で対になっていると思った。現代社会では少子高齢化が進んでいるが、本当にこのようなシステムができる日が来るのかもしれない。