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傲慢と善良【本の感想】

 

 

本の紹介

著者 辻村深月

朝日新聞出版

発行年 2022年

 

本の感想

西澤架は消えた婚約者.坂庭真実を探しに出る。ストーカー被害にあっていたという真実のことが心配で、彼女の両親や友人に協力を仰ぎながら真実を探す。その過程で明らかになっていく真実の過去と善良さ。今までは気づかなかった自分の傲慢さを描いた物語。

 

慢と善良というタイトルから分かる通り、この本は人間の傲慢さと善良な部分を描いた物語。読む前は難しそうだなと思っていたが、読後は自分の傲慢さに気付かされてしまい苦しくなった。それだけ私たちの生活に組み込まれている物だった。

物語は真実の家にストーカーが忍び込んだという電話から始まる。架と真実は婚活をしていてマッチングアプリで出会い付き合った。お互いに30歳を超えて周りが婚約者ばかりになって行く中、2人はまだお付き合いの状態だった。そこで真実が消えてしまう。

 

語前半は架が真実を探すために、真実の過去に関係のある人たちに話を聞くパートだ。架はストーカーの名前も顔も知らない、ただ真実の昔の知り合いというだけしか情報がない。傲慢さゆえに知ろうとしなかったというべきだろう。聞き込みを続けていくと、真実の傲慢さや善良さが見えてくる。それと同時に自分の傲慢さも。

前半はとにかく苦しかった。婚活の大変さや苦しみ。自分の傲慢さが見透かされているような気分だった。人に点数をつけるのは最低だけど、気づかぬうちに自分の中にボーダーラインが出来ていたんだなと思い知らされた。好き、嫌い、いい人そうだけど合わないなど、恋愛や友人関係で何かと理由をつけて人を選別していた自分もいるので、そんな私も傲慢だったのだろう。

 

半は真実視点で物語が進行する。前半で架が聞き込みに回った答え合わせをするように、当時の真実自身の考えが書かれている。前半で架や真実の周りの人の考えを聞いたわけだが、それはあくまで周りから見聞きしただけのもの。真実自身が思っていたものではないし、全てが合っているわけではない。私は真実の考えが好きだなと思った。変わろうとする姿や、嫌いなものはしっかり嫌いと思える所に惹かれた。想像よりも真実がしっかりしててびっくりした。親や友人が見聞きした情報は信じちゃいけないなぁと思った。本人がどう思っているかなんて誰にもわからないのだから。

 

活という生きづらい世界で奮闘する架と真実。自分の傲慢さを振り返って変えようと努力できるか、善良すぎる自分を捨てることができるのか最後まで目が離せない展開が続く。個人的には最後が少しうーんと思ったけど、婚活をしていない自分からしたら2人の苦労に口を出すべきではないだろう。

私も自分の中の傲慢と善良のバランスを気にして生きていこうと思えた。特に人を見る目だけは変えないといけないなと思った。傲慢がすぎる人にならないように、それでいて善良さも少し持ち合わせて。難しいかもしれないが、意識しようと思わせてくれた本書に感謝しよう。