本の紹介
著者 近藤史恵
発行 2017年
本の感想
出産を目前に控えた遼子。初めての出産で不安を抱えるなか、夫・克哉の海外赴任が決まる。しかも克哉は上司に反抗するどころか、遼子を置いて海外赴任に行く気満々だった。
冒頭からクソ夫ぶりを見せてくれた克哉。思わず遼子の代わりに一発お見舞いしてやりたい気持ちになった。遼子は実家に帰り里帰り出産の準備を進めるが、実家家族の様子がおかしいことに気づき始める。章を重ねるごとに少しずつ明かされていく真実に、遼子も読み手の私も信じられない気持ちでいっぱいになっていく。
本のタイトルにもなっている「私の命はあなたの命よりも軽い」という言葉。命の重さは等しく平等を訴える人が多い世の中で、このタイトルは攻めてるなと思った。読み進めていくとこの言葉の真意が分かるのだけれど、もし私が年下の人にこんな事を聞かれたらうまく答えられないだろうなと思った。
家族といっても親と子の関係性は人それぞれ違う。それこそ家庭の数だけ違った関係があるだろう。本書に出てくる遼子の親は典型的な大人な親って感じがした。娘のため家族のためとは言いつつも、結局は世間体や自分のプライドを守るための行動しかしない、自分の考えが正しくて娘にそれを押し付ける。私が嫌いなタイプと同時に、世の中に一番多いタイプの親だと思う。
結局子供が不祥事を起こした際に世間から責められるのは親だったりする。しかし、そこで自分の身を削ってでも子に寄り添える親は少ないような感じがする。遼子の父親は娘のせいで自分が辛い思いをしているんだ!って態度に出てるし、母親はこれ以上面倒なことにしないで、私を巻き込まないで!って感じのスタンスで情けないなと思った。遼子が実家に帰って来なかったら今頃家庭は崩壊していただろう。
怖いのは女だけではない。今ならそう言い切れる。