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汝、星のごとく【本の感想】

 

 

本の紹介

著者 凪良ゆう

講談社

発行 2022年

 

2023年本屋大賞第一位に選ばれた本書。

凪良ゆう先生は「流浪の月」に続き二度目の受賞を果たしている。

 

本の感想

何やら不穏な空気で始まる冒頭。どうやら主人公暁海の結婚相手には、暁海公認の想い人がいるようだ。学生時代の話から始まり、自立した大人になっていく暁海と櫂。そんな二人の恋愛と家庭環境を描いた作品。

 

学生時代の二人は親のせいで自分の人生が歩めず、閉鎖的な島のせいでその生活を話題のネタにされていた。私自身、学生時代の暁海にはとても共感できた。私も同級生が10人しかいない田舎で育ち、そんな田舎で他所の不幸は蜜の味状態を経験してきたからだ。

誰かと付き合えば、次の日には周りの家の人がみんな知っていたし、プライバシーなんてものはなかった。しかも母親が私のバイト代を使ったり、不安定な母親の世話を焼いたりと重なる部分が多かったのもびっくりした。世の中には案外私みたいな人もいるのかもしれない。本書を通して暁海のような現状の学生は本当にいることを知ってもらいたい。

 

中盤から暁海と櫂が正反対の道をいく事になる。狭い世の中から飛び出した櫂、どうしようも出来ずに必死にもがき続ける暁海。櫂はちょっと羽目外しすぎだろと思ったけど、自分の夢で庶民から売れっ子になるということに浮かれてしまったんだろう。お互い学生時代から自分の意見を我慢してきたからこそ起きてしまった事だと思う。実際お互いに言い渋っていたし。まぁ浮気や不倫はダメだけどね。

 

そんな二人を正しく導こうとする大人たちもいた。北原先生や瞳子さん、そして植木さんだ。物語を通してこの三人は自分の意思を曲げずに貫いている。暁海や櫂に対しても絶対に手を抜いた対応はせず、二人を大人として見て接しているのが分かる。二人の人生の分岐点では、この三人の誰かの言葉を思い出している場面がある。親がどうしようもない二人からしてみれば、それほどしっかりした芯を持った大人はこの三人しかいなかったのだろう。逆にこの三人が居なかったら暁海と櫂は自分の夢に向かっていけなかったと思う。きっと今も島の中で親に浪費されて過ごしていたに違いない。

 

ラストは涙なしには読めない内容だった。特に暁海に感情移入していた私は、感動すると共にこれからの人生頑張ろうと思える内容だった。親のせいで青春が潰れていき、ただ自分の人生を歩みたかった暁海と櫂。私たちの周りで知らぬ間にもがいているヤングケアラーの葛藤。田舎や高齢者に噂のネタにされる学生。どれもが現実にあることで変えていかなくてはいけない現状。これらを経験したことがある人とそうでない人で評価が分かれそうな本書だが、私は一人でも多くの人に読んでほしい一冊だと思った。

「汝、星のごとく」の続編として先日発売された「星を編む」も読むのが楽しみだ。